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PTシリーズ

アプリケーション・ノート

PTシリーズ

定格100 ~ 500 AのEV/HEV用ヒューズ

当社ではこれまでDC450 Vで定格電流100-350 AのPTシリーズをリリースして自動車新時代におけるアプリケーションをはじめとする幅広い用途でみなさまにご活用いただいてきました。
そして最近このシリーズに、定格電圧DC500 V、定格電流500 Aの新製品が追加されたことでEV/HEV用のラインアップが充実しました。
ここでは、この新しくなったPTシリーズの用途・特徴、開発の背景、基本構造、推奨する理由等をご紹介します。
 

SOC グループ:
エス・オー・シー株式会社
SOC America Inc.
SOC Asia Pte. Ltd.
SOC Europe B. V.

PTシリーズ製品の用途と特徴

用途:

自動車(EV、HEV、PHV、FCV)、電動建機の高電圧駆動回路、駆動用バッテリー、太陽光発電、UPS等の蓄電バッテリー、産業用機器のDC-DCコンバータ、インバータ・モータードライバ、無停電電源 等

特徴:

高電圧、大電流、高遮断容量定格をもつコンパクトなヒューズ、振動・衝撃、高温・低温など車載レベルの各種環境耐久試験に耐えうる長期信頼性、リレーなど他の保護素子との高い協調性

 

開発の背景

「CASE」・・・ Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)というキーワードで代表される新しい領域で、100年に一度とも言われる自動車をめぐる技術革新・環境変化が進行しています。
駆動用バッテリー、高電圧駆動回路、補機回路等の幅広い電気回路・エレクトリックデバイスの保護用と言った時代の要求に応えてリリースしたPTシリーズ(PT2035、PT2545、PT3050)に、「より大容量のバッテリー、より大電流の回路を保護する」という更なるニーズに対応すべく、電流、電圧、遮断定格においてシリーズ中の最高峰となるPT4065を新たに加えました。

初期のハイブリッド車に使われたヒューズは、大型の産業機械等に使われたヒューズの転用でした。
それらのヒューズは、工場等に据え置く機械に取り付けることを前提に設計されており、車載用としては本体寸法が大きく、取り付けにも大きなスペースが必要とされる重いヒューズでした。
また車載部品に求められる機械的耐振性・耐衝撃性、電動自動車特有の電流ON/OFFの繰り返しパルスへの耐性も十分ではありませんでした。

このため電動自動車設計エンジニアの方々からは、車載に必要な機械的耐久性と電動車に求められるON/OFF繰り返し電流パルス耐性を有し、且つ、コンパクトなサイズのヒューズが求められていました。
ヒューズ専業メーカーである当社は、1958年の創業以来の電気・電子機器用ヒューズを企画・開発・設計・生産・販売してきた技術とノウハウをフルに活用して、電動車に求められる機械的・電気的耐久性に優れたヒューズエレメントと構造を用いた当社独自のコンパクトなヒューズを開発し、10年以上前から、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)の回路保護にご採用いただいてまいりました。

やがて自動車新時代に入り電動化が加速する中で、車載バッテリーの大容量化と高性能化が進み、バッテリーの短絡電流はより大きくなり、バッテリー回路を保護するヒューズに対してより高電圧且つ大電流での遮断能力が求められるようになってきました。

そこで当社は、より高い耐久性と遮断能力を兼ね備えた進化形のヒューズエレメントを設計・開発して、定格電圧DC450 V、定格電流100 Aから350 Aまでのヒューズ製品群としてPTシリーズをリリースしました。
EV/HEVや電動建機の駆動用バッテリー、高電圧駆動回路、補機回路等、各種アプリケーションの保護に活用できるヒューズとして広くご採用いただいてまいりました。

EV/HEV、バッテリー技術の進歩とともにますます高まるヒューズの通電容量及びより高電圧での遮断能力に対するニーズに応えるために今回追加リリースしたのがPT4065です。
定格電圧DC500 V、定格電流500 A、定格遮断容量20,000 AをカバーするPT4065は、大型クラスの駆動用バッテリー保護にも採用いただけるヒューズとなっています。

 

PTシリーズの基本構造

  1.  製品は端子、キャップ、筒(セラミック)、ヒューズエレメント、消弧剤の5点の部材によって構成されており、各部材に厳選された材料を使用して高性能・高品質を実現しています。
  2.  最初にリリースしたPTシリーズでは、基本構造を同じくする大きさの異なる3つのタイプ(PT2035、PT2545、PT3050)をラインアップし幅広い定格電流(100 ~ 350 A)に対応してきました。タイプ名の数字はヒューズ本体のおおよその大きさ(径X 長さ)を表し、例えばPT2035は φ20 x 35 mmです。
  3.  PT4065ではそれまでのPTシリーズ製品の優れた基本構造コンセプトを踏襲しながらも、ヒューズエレメントに2枚対称配置を新たに採用することにより、コンパクトなボディーサイズ φ40 x 65 mm の大電流定格500 Aヒューズを実現しました。

 

 

 

主な仕様

 

PTシリーズを推奨する理由

当社が小型・軽量なDCヒューズの開発を開始しましたのは、スイッチング電源が登場し始めた頃からです。
二次電池バッテリーが携帯電話、ラップトップコンピュータなどの機器に用いられ始めた時代からは、DC回路保護用ヒューズの技術を先導してきました。
それらの経験と実績を元にEV/HEVの高電圧バッテリー、配線、補機の保護に用いるDCヒューズを開発してリリース、これまで10年以上にわたる多くの車載採用実績を築いてきました。

自動車に搭載するヒューズは、温度・湿度サイクル、振動・衝撃、パルス通電電流サイクルなどの厳しい試験に合格する必要があります。
試験条件を規定したJASO D622-3、ISO 8820-8などの自動車用ヒューズ向けの国内外の安全規格ができ上がる前から、必要なテスト設備を揃えて開発を積み重ねて、お客様の車載試験基準を満たす製品を提供してまいりました。

今回のアプリケーション・ノートで紹介しているPTシリーズがそれまでの当社製品と比較してさらに優れている主な点は、電動車技術、バッテリー技術の進歩に対応できるように遮断能力を格段に向上させたことです。
バッテリー技術の進歩によってバッテリーに蓄えることができるエネルギーと、バッテリーから取り出すことができるパワーが大きくなってきたことはバッテリーが短絡した際に流れる最大電流が大きくなることに直結します。
大電流でも安全に遮断できるだけの高い遮断能力が求められるようになってきました。
そこで高遮断能力の要請に応えることができるPTシリーズを開発いたしました。

EV/HEVでは駆動用バッテリー電流制御のための装置としてPTシリーズなどのEV/HEV向けヒューズと電磁機械式のリレーを組み合わせて使用します。
ヒューズの役割は回路短絡などによる大電流事故時の電流遮断で、リレーの役割は電源投入・シャットダウン時のバッテリーのON/OFF制御です。
リレーが耐えることのできない大電流が流れる事故の際にはリレーの破裂・発火などの大惨事になってしまうところを、ヒューズが動作して電流を遮断することで人と車の安全を守るのです。
PT4065では20,000 A、PT3050で16,000 A、PT2545とPT3050でも10,000 Aまでと、それぞれの定格電流に応じて十分に大きな電流を安全に遮断することができるのがPTシリーズの特長で、最新の高性能バッテリーの保護に対応しています。

PTシリーズの開発で遮断能力向上実現の鍵の一つとなったのがヒューズエレメントのデザインです。
PTシリーズのヒューズエレメントでは電流経路に対する複数の狭隘部を設けるとともに折曲部を持つ立体構造を形成してコンパクトなサイズと耐久性・信頼性を維持したままで高い遮断能力を実現しています。

PTシリーズの筒には当社が厳選した無機セラミック素材を採用しています。
樹脂などの有機素材やガラスエポキシなどの有機無機複合素材などと比較して、軟化温度、発煙温度、引火温度、発火温度が高い、機械強度が大きい、熱伝導率が高いといった優れた材料物性があります。
この素材選択が、-40 ~ 125℃ までの広い使用温度範囲、遮断能力の向上、耐久性・信頼性の向上、小型サイズ化に大きく寄与しているもう一つの重要な鍵です。

さらにもうひとつの重要な鍵は品質管理です。
PTシリーズをはじめとする当社の車載向けヒューズはISO 9001およびIATF 16949の認証を受けた工場の専用製造ラインで、お客様の厳しい品質要求にこたえるよう万全を期して量産されています。

このたびのPT4065追加リリースでますます充実したPTシリーズを、当社の11CTシリーズ、25CFシリーズなどの車載制御回路用SMDチップヒューズや、625シリーズ、1030シリーズ、1040シリーズなどの車載補機用ヒューズとともにどうぞご検討ください。
当社では高電圧・大電流化の流れの今後の一層の進化を念頭に、市場投入が見込まれるEV/HEVのニーズを先取りしたヒューズのさらなる開発に取り組んでいます。

 

お客様へ

お客様の製品安全設計では、ヒューズの基本仕様やカスタマイズ情報、使用方法、近々リリースが予定されている製品情報等が、お客様が開発する製品のデザインレビューでは、シミュレーション、信頼性試験、実機試験結果が必要になるものと思われます。
このような場合にも、是非お気軽に、私共にご連絡ください。